坂本未希(2022)
「DV被害者支援の現状と課題 : 公的支援の領域を中心に」

掲載日:2024年1月22日 

論文


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論文名 DV被害者支援の現状と課題 : 公的支援の領域を中心に
English Paper name Current status and issues of DV victim support : Focusing on the area of public support
著者 坂本未希
大学・学部 龍谷大学大学院政策学研究科
発表年 2022年
DOI info 10.50873/10309

論文要旨

筆者自身のDV被害からの避難、調停、裁判を経ての離婚、そしてその被害の後遺症であるPTSD、子育て、ひとり親、経済的困窮、就労などの課題に向き合ってきた経験を踏まえたうえで、その経験や課題を備隊的に捉え、被害者の第一義的なゴール(goal)から真の自立にむけた多様なゴールズ(goals)に対する制度的、政策的な課題を検証し、明らかにする。

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論文の引用

引用セクション/ページ:43

DVは暴力であり犯罪である。 しかし、子どもの面会交流や養育費の問題もあり、加害者との縁を完全に断ち切るのは難しい。極端な言い方をすれば、DV被害者にとって「加害者が死ぬまでDV被害は続く」という現実があると言える。

引用セクション/ページ:44

社会的に弱い立場に追いやられてしまうDV被害者が真の自立を辿るためには、あらゆる暴力やその後遺症から離脱し、社会的包摂(ソーシャルインクルージョン)のもとで子育て、就労(女性の再就職)、社会参加、経済的自立など、DV被害者それぞれの多様なゴールズ(goals)を設定、クリアしていく必要があり、その支援の多様性そのものが真の自立を支える構造ではないかと考えている。

引用セクション/ページ:48

女性の経済的自立の困難・ワーキングプアの実態については、傍証であるが、母子世帯の経済状況の実態調査結果がDV被害者女性の離婚後の生活の実情に重なるものと推察する。心的ケアをすることでPTSDの症状や体調不良が改善され、就労が可能となり、貧困の連鎖の解消につながると考える 。

引用セクション/ページ:49

暴力(DVや虐待)の世代間連鎖の中で、被害者や子どもはDV被害によるPTSDなどの後遺症により、生活や就労が困難となり、貧困の悪循環に陥ってしまう 。暴力や貧困の世代関連鎖を断ち切ることが求められる。

引用セクション/ページ:56

DV被害にあっても、離婚する人は約2割で、ほとんどの被害者は経済的・社会的・心理的要因により加害者と離婚することができず、DV被害から離脱することができない。

引用セクション/ページ:56

アンケート調査の結果、「一時保護前」と「離婚時の支援に注力している機関が多く、加害者から引き離した後の支援は少なかった。加害者から引き離せばDV被害は終わるという認識がその背景にあるかは断定できないが、DV被害者側の視点から見ればその様に受けとめられでも仕方がない現状にあることがわかった。PTSDの症状をもっ被害者へ特別なケアが必要であるという認識は高いが、PTSDの社会的な認知は進んでおらず、PTSD回復のための支援もあまり実施できていないことが明らかになった。

引用セクション/ページ:58

DV被害者にとっては先ずDV被害からの避難 ・離別が最初のゴール(goal) になるが、その後の自立に向けた多様なゴールズ(goals) が当事者性からの視点でカスタマイズされていく必要がある 。そのカスタマイズのプロセスにこそ当事者性の視点をもった専門的なナビゲーター(総合支援コーディネート)機能が求められ、そのナピゲーター機能こそがDV被害からの悪循環及び連鎖を断ち切る手段だと考える。


論文の公開 https://opac.ryukoku.ac.jp/iwjs0005opc/bdyview.do?bodyid=TD32179246&elmid=Body&fname=rd-se-kn_11_004.pdf&loginflg=on&once=true
掲載書誌 龍谷大学大学院政策学研究第11号43-59
資料種別 紀要論文
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