「民間の面会交流支援団体及び支援活動についてのヒアリング」を法務省が公開

掲載日:2024年5月2日 

報告書

1 はじめに
  離婚後または別居中の親子の面会交流は、深刻な対立・紛争に発展することが少なくなく、きわめて調整も困難な問題となっている1。日本において、この種の紛争が激化する背景には、面会交流を含む親権・監護をめぐる法制度の不備のほかに、親子の面会交流のサポートをする組織や人材などの不足をあげなければならない2。民間の面会交流の支援組織としては、元家庭裁判所調査官などによる社団法人「家庭問題情報センター」(FPIC)をあげることができる。FPIC は、もともと 1987 年に東京ファミリーカウンセラー協会(TFCA)として発足し、1993 年 3 月に社団法人として設立が認められた。FPIC では、東京、大阪、名古屋など全国 8 箇所に相談室を設置して、夫婦仲の調整、離婚などの夫婦の問題、離婚後の子の監護、面会交流、いじめや子育ての悩み、高齢者の介護や財産管理など家庭の問題について幅広く相談に応じたり、夫婦親子関係についてのセミナーを開催したり、企業や自治体などの講演会への講師の派遣、成年後見人の候補者の推薦などの活動をしている3。
現在、FPIC は、新たに松山に相談室を設置するとともに、公益法人に移行するべく準備中である。
 また、大阪でも、特定非営利活動法人(NPO)「安心とつながりのコミュニティーづくりネットワーク」(FLC)の「子どものための面会・交流サポートプロジェクト」(Vi-Project)が 2006 年 5 月から本格的な支援活動を開始している。FLC は、1990 年 10 月に「女性ライフサイクル研究所」として発足し、2002 年 11 月に特定非営利活動法人となって、児童虐待や暴力の予防、早期発見、介入、被害者・家族への心理的ケア・加害者対策、援助者の養成、子どものための面会交流支援などの活動を営んでいる4。このほか、「離婚後の子どもと親の会」「NPO ビジット」「日本家族再生センター」などの民間機関が面会交流の支援や共同親権・共同監護について活発な活動を展開しているが、規模が小さく、扱っている件数もあまり多くはない。
 ここでは、とくに FPIC の面会交流部門の責任者で理事の山口恵美子先生と FLC のVi-Project の責任者である桑田道子先生にヒヤリングを実施し、民間の面会交流支援活動の実情や課題、今後の面会交流支援の在り方についてお話を伺った。

法務省「Ⅰ 民間の面会交流支援団体及び支援活動についてのヒヤリング」『親子の面会交流を実現するための制度等に関する調査研究報告書』

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報告書からの引用

引用セクション/ページ:3

FPIC の面会交流援助事業の目的は、①親子関係の継続・再構築援助、②子が親を知る、親との縁を断絶されないための子ども支援活動、③これを実現するための両親に対する心理教育である。
(中略)
FPIC による親子の「面会交流支援」は、FPIC 内での事前相談、連絡調整・子どもの受け渡し援助、付添い援助、試行的面会援助という内容になっている。
(中略)
事前相談は60 分 5000 円、90 分 7000 円となっており、予約制で両親と子どもの各 1 回を予定している。

引用セクション/ページ:4

付添い援助は、相談室内での付添い援助だけでなく、屋外の適切な場所での面会交流に援助担当者が付き添うもので、同居親の同意があれば祖父母など複数の者との面会もあり、面会場所、時間、子どもの年齢・数や援助の内容等により事情に応じた料金が設定される。

引用セクション/ページ:5

FPIC では、面会交流に当たり「お父さん」に対しては、子どもが父母の間で板ばさみとなって苦しんでいるので、「子どもを板ばさみにしないで」というメッセージを伝えている。

引用セクション/ページ:7

第 2 に、紛争の渦中にある親は自分の心ばかり見えていて、相手の心や子どもの心が見えていないことが多い。子どもは、怒り・悲しみ・恐怖・不安など抱えていることを理解させる。つまり、子どもは安心できる環境でしか感情を吐露しないといった、子どもの心理について親に説明する。また、子どもは、自責感情、忠誠心葛藤、過熟現象による頑張
り、親子役割の逆転、本音の封印などを起こしやすい。たとえば、自分がいい子でなかったから、両親が離婚したという自分を責める感情を子どもが持つことがある。また、自分が嫌だと言ったから面会交流がなくなった、自分が「親棄て」をした、という自責感情を子どもが大人になってから持つことがある。

引用セクション/ページ:11

専門家のヒヤリング調査では、離婚後の親子の面会交流は、非常に複雑な感情表出が持ち込まれ、子どもたちが動揺させられたり不安を抱かせられることが多く、何よりも子どもの心身の安全を確保するための枠組みが必要であること、援助者は父母から独立した第三者として子どもの利益にそった面会交流が実現するように努めなければならないこと、子どもの気持ちやニーズに敏感であり、子どもの立場を代弁すべきこと、面会交流の援助者は、父母の感情的摩擦や子どもへの不適切な言動を予防し、面会交流に両親がわだかまりを持たないようにしなければならないこと、面会交流には、たとえば相手方の親の悪口を言わないとか、嫉妬や寂しさをぶつけてはならないなど最低限度のルールを決めて、それを確認し誓約させる必要があること、また父母にはどのようなリスクファクターがあり、子どもはどのような影響や傷を受けたかなどのリスクアセスメントも必要であること、面会交流中のモニタリング(同席と記録)をし、その事案をつねにフォローアップし、継続的な面会交流の計画を立てることが可能になること、面会交流の機会に、同居親との接触が
とりたいとか、子どもから同居親の様子や連絡先・住所等を知りたいとするものもいること、面会交流によりせっかく DV から逃れて安定した生活の再建や子どもの生活環境の改善を試みたのに対して、不安や恐怖心が顕在化することになることなどが指摘されている。

引用セクション/ページ:18

ほぼすべてのケースで程度の差こそあれ DV が起こっている。妊娠中の妻の腹を蹴った虐待父が子との面会を望むというようなケースもあった。監護者は鬱病、適応障害等を患わっている者が多い、親子ともに発達障害を持っているケースが多い。

引用セクション/ページ:22

(b) 紛争の渦中にある子どもの心
紛争の渦中にある親は自分の心ばかり見えていて、相手の心や子どもの心が見えていないことが多い。
① 怒り・悲しみ・恐怖・不安
子どもは安心できる環境でしか感情を吐露しないといった、子どもの心理について親に説明する。
② 自責感情
③ 忠誠心葛藤
④ 過熟現象による頑張り、親子役割の逆転
⑤ 本音の封印


ソース 法務省